ただ単に効率優先でオイルを「入れ換える」だけの場合と、きちんとバイクのことをいたわりながらの「オイル交換」。ここまで気を使った作業ならば、万が一の不具合だって、早めに発見して対処する事が出来る。簡単に済ませていたらわからない事も、たくさんあるのだ。
「うちが発売しているオリジナルマフラーだって、オイルのことも考えて設計してあ
る。ノーマルマフラーって、エキパイが邪魔で、フィルターを外すにも手が届かない事がよくあ
るんだけど、それを考えて、もちろんパワーのことも考えながら、エキパイをオフセットさせて集合させている。サイドスタンドを掛けてドレンボルトを抜けば、どこにもオイルが付着せずに作業することも出来ように設計してるからね」
オイルを交換するときには、規定量をきちんと測ってから。それは当然だけれど、栄重さんはまず、規定量があ
っているかどうか、をあらかじめ測っているのだという。市販のオイルジョッキは、目盛りどおりの内容量ではないケースが多いのだという。
「ジョッキに目盛りが振ってあ ると、普通は信じちゃう。レースのとき燃費計算をしようとして、タンク内に残ったガソリンを測るんだけど、そのクセで一度疑問に思ってジョッキを測ってみたら、これがぜんぜん違うんだ。500mlずつガソリンをメスシリンダーで計測して、それをジョッキに足していったら、1L、2Lと、どんどん誤差が広がってきたんだ。考えてみたらJIS規格でもない入れ物なんだから、結構間違ってるんだよね。気温によってもジョッキが膨張したり、縮んでいたりするし、へこんでいたらもっと量は変わってくるでしょう」
オイルを入れるのだって、まずは規定量よりも少なめに入れてからエンジンをかけ、しばらくオイルを潤滑させてからレベルチェック。その時でも、一度ヘッドに回ったオイルが下がってくるのを見計らって、しばらく時間をおいてから測るという念の入れよう。これも、ただ入れただけでは気がつかない、本当のエンジンオイル量の測り方だ。オイルフィルターを交換するときには、ケース合わせ面を脱脂してから、フィルターのOリングにグリスを指で薄塗りしてくれる。ドレンボルトも洗浄した後にグリスアップして、締めつけはもちろんトルクレンチで、規定トルクどおりに組みつけてくれる。すべての作業が完了した後には、クリーナーで脱脂して拭き取ってから、愛車が手元に戻ってくるわけだ。まるで、サーキットでファクトリーレーサーを整備しているような手順で、ササッとメニューが進んでいくのだ。
「こうやると、お客さんだってうれしいでしょう。僕がレースをやっているとき、ファクトリーチームを指揮しているときにマシンを触っていたようにやっているだけなんだけどね。グリスアップするのは、何度もボルトを抜き入れしているうちに、ケース側のネジ山がヤセてきちゃうし、カジリ防止にもなる。トルクレンチを使うのだって、締めすぎてもネジ山に悪いし、緩すぎるとモレてきちゃうから。面倒がらず、基本どおりにやっているだけなんだけどね。ドレンボルトのワッシャーだって、毎回新品を使わないと、一度締めこむとつぶれちゃうものだからね」
オイル交換は、新車時とエンジンオーバーホール時には1000km。次は2000km、そして3000kmごと、というサイクルを徹底。距離が伸びなくとも、6か月を目安としたオイル交換を勧めている。自分のバイクをここまで大事に扱ってくれるショップって、なんだかうれしくなってくる。これがエイジュウプロの考える「プロがやるオイル交換」なのだ。きちんとした整備で、気持ちよく楽しくバイクに乗る事。これが、エイジュウプロが考えている、本物のサービスだ。
株式会社 エイジュウプロ
代表 渋谷栄重氏
68年にモトクロスデビュー
73 年にはヤマハ発動機入社
82年にはヤマハファクトリーチーム、モトクロス監督に就任
83年ロードレースに選手としてデビュー 鈴鹿4耐6位入賞
84年ヤマハ発動機退社 鈴鹿8耐、16位
87年(株)エイジュウプロ設立
95、98、99、2000年に鈴鹿8耐に参戦 99年はX-Fクラス3位
|