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MOTUL: SS600は本当に面白そうですね。もう少し詳しくお聞かせください。
森脇: このSS600のクラスっていうのはヨーロッパでは非常に人気のあるレースなんです。ものすごく多くの人たちがSS600に走っています。下手すればGPライダーのもらってるお金よりも、SS600で走って勝つライダーの方が契約金が多いんじゃないかと思うぐらいメーカーさんも力入れてるし、皆もそれだけたくさん走ってるんですよね。やはり、レギュレーションがある程度厳しくて、スペシャルバイクでも費用がかからないという点で人気があるのでしょう。それと、ものすごい高い次元で競争がされてるということも理由の1つなんです。

日本にそれを持ち込んだ場合にどういうことが考えられるかというと、今まで250、125に乗っていた人が上のクラスに行くときに乗るのは何ですかといったら、もう400ccクラスでは全然だめなんですよ。次乗る車といったら、スーパーバイクしかない。もしくはXフォーミュラしかないんですよね。ステップアップするのにいきなりスーパーバイクに乗れるのかといったら、まず経済的にも無理ですし、経済的なものを無視して考えても、例えば100人の人たちがスーパーバイクに乗るとしたら、何人の人が乗りこなすか、コントロールできるのかということなんですよね。大概の人がコントロールできない状態になるでしょう。

ところが、600のクラスというのは125の人も250の人もコントロールできる範囲なんですよ。なおかつ、そこでもう1回その人たちの技術が上がる可能性があ る排気量なんですよ。そこで技術が上がった人がまた上の1000ccとかスーパーバイクに行ける可能性があ るんです。恐らく、乗りやすいという面においては1000ccに乗ってる人、スーパーバイクに乗ってる人が600に乗っても乗れますし、下の人たちが乗っても乗れるというクラスなんです。

お金さえあれば確かにスーパーバイクも買えるしXフォーミュラもできます。できるんだけども、乗れますかといったら乗れないというのが実際のところじゃないですかね。ですから、そこの技術へ行くまでに時間がかかるという事ですよ。でも、その技術を習得するまでの素材がないんですよ、今のところ。

この600クラスというのは、そういうところになり得るカテゴリーというわけなんです。世界のGPライダーが、ヨーロッパでもスポットで600のレースに参戦したりするのも、結局自分の技術の向上にもなりますし、いろんなものについての最高の場になると思うんですよね。ミドルクラスであ り、上からも下からも入ってこれる。なおかつ、技術を磨くためにはいいということになると、レースの一番中心的存在になって、そこから上は多分特殊になると思うんですよね。
100人が600から上がってきてスーパーバイクに乗っても、そのうちの10人とか15人ぐらいが定着してスーパーバイク走れていくかもわからないけど、ほとんどの人が「こんなんちょっと無理や、危ないな」ということで去っていくと思うんですよ。ですから、今どんどんレース人口が減っている方向になってるんですよ。下から入ってきても、しばらくして次に乗る車がなくていきなり大きな車だから、乗ったらおっかないしということで去っていくんですよ。

それと、日本の国情を考えると、やはり道路も狭いですし、雨がよく降る。そういうケースの中で、600ccというのは雨の中でもこけにくい。どっかんパワーじゃないということもあ って、日本人としてはものすごくコントロールしやすいクラスになっている。出力もそんなに無茶苦茶出てるわけじゃない。ところが、高速道路を走ると恐らく1000ccに匹敵するぐらい走っちゃうんですよ、600というのは。峠道、いわゆる峠で走ってる人たちがおるんですけど、まずこの600には勝てないですね、1000cc乗ってる人たちは。いろんな競争しても、恐らく負けると思いますね。

そういうことからしても、ヨーロッパ以上に日本の国情に合ってるのは実は600ccなんです。免許の改定もされてるし、大きな車に乗っていた人もたくさんいるんですけど、現実性がないんですよ。憧れとしては最高のものだと思うんですけど、現実性がない場合もあ る。恐らく日本で各メーカーさんが600を市販したら爆発的に売れるんではないかなと思うんです。それだけ人気が出てくる可能性のあ るクラスなんですよね。

MOTUL: VTRをあえて全日本に投入したときもそうですし、今回また新しくSS600というクラスに飛び込んでいかれる。常に人のやっていない新しい世界に自らが飛び込んでいくということはものすごくパワーの要ることだと思うんですけども、そういうスタイルを森脇さんはずっと続けていらっしゃいますよね。
森脇: それは、モリワキエンジニアリングという会社だけのことを考えればマイナスの面があるかもわからない。エネルギーを使い過ぎるところがあるかもわからないんですけど、やっぱり業界全部だとか全世界を視野において、何を今自分たちがするべきか?今までうちの商品をたくさんの人たちが買ってくれて、それでうちの会社が成り立ってる。その人たちはもう既に二輪業界にいないかもわからない。四輪に乗って皆歳がいってしまっている。けども、そのお陰で自分たちが今ここにある。

だから、やっぱり自分が今やらないかんのは、この業界をもっと存続していって、もっといいものにしていくためには何をしたらいいのかということで、せっかくそうやってうちの商品を買ってくれた人のパワーで、社会に貢献できるようなことをしていかないかん。そのことがまた逆に自分たちも商売にもなるし、次の発見にもなるということですからね。
だから、何かがいいからそっちへ行くというのではなくて、いいものがあ るだろう、あるものを皆に知ってもらいたい。というために一生懸命やるわけです。どんどん知ってもらっていきだしたら、もっと次ないかと、次のものを探していくと。やっていくと、どんどん変化していくんですけども、決してVTRから600に変わったからVTRをなくして600に変わってしまったわけじゃないんですよ。このVTRというのはまだずっと進化を続けてるんですよ。

これからレースの世界は、そりゃ最終的に2ストロークがなくなって4ストロークに全部なりますよ。世界グランプリも、最終的には4ストロークを使えるグランプリをやりましょうという話が持ち上がっていますよね。その中でVTRの進んでいく道というのは、最終的に世界グランプリが4サイクルの1000ccあ たりでやるような形になった場合、そのパワーユニットを使ってモリワキから世界選手権 のレースに参戦していくということを目標があ るんです。でもそれだけではだめですから、600も一緒に考えています。日本国内でもっとオートバイ人口増えないかなということで手を掛けてスタートしてるわけなんです。

だから今は両方が並行に進んでいるという感じですね。ただ、表に目立つのは、今確かに600、600と言ってるから600かもしれませんけど、VTRを決して忘れたわけじゃなくて、こいつはもう1つ先に、潜水して、今度出てきたときに、先に上がってどんと出てくるという、潜水泳法ゃないですけど、そういう形のものを今とってるということなんですね。
 
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